交渉のベースは人の「心」

先日都内のIT系スタートアップ企業様で交渉術の研修を実施させていただきました。研修の内容は『ハーバード流交渉術~イエスを言わせる方法』(ロジャー フィッシャー , ウィリアム ユーリー著、三笠書房発行)がベースとなっていますが、本著を読み返してみると、改めて交渉とは人間同士のコミュニケーションであり、「心」が大切なのだと感じます。

この本で書かれている交渉のポイントはざっくり言うと、価格や品質、日程といった「立場」ではなく、その「立場」の背景にある真のニーズ、「利害」に焦点を当てた交渉をすればウィンウィンの結果を得やすい、ということ。

例えば価格交渉を行うにあたっても、〇〇円が良い、悪い、といった交渉では亀裂しやすい。しかし「どうして」相手が〇〇円でなくてはいけないのかまで掘り下げ、背景を理解した上で、その背景にある問題を解決するベストなシナリオを共に探ると双方満足いく結果が得やすい、ということです。もしかすると相手が希望する価格は飲めなくても、品質を変える、将来的なプランを提示する、などで合意を得られるかもしれません。

人間というのは相手の要求を押し付けられていると感じると、引いてしまうものです。でも自分の意見を聞いてもらえて、理解、共感してもらえていると感じると心を開きやすくなります。信頼関係を築きラポールを形成することが大事、ということですね。そうして互いが心を開いて前向きに議論すれば、良い結果が得られやすいのは自然なことと思えます。

こう考えると、交渉術も結局そうした人間同士のコミュニケーションであり、つまり「心」がベースになっていると改めて気づかされます。「交渉」というと、駆け引きを中心としたビジネスや政治の世界のものだけという印象がありますが、こうして人間同士のコミュニケーションだと考えると夫婦間、親子間、友人間など、あらゆるところで当てはまるのではないでしょうか。

互いに相手の話をよく聴いて、相手の気持ちや状況(上述した「利害」)を考え思いやる、結局小学校の道徳でも習うような基本的なことが大切なのですね。

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