新型コロナウィルスへの不安に対し、私たちができること

今世界は新型コロナウィルス関連のニュースにあふれています。毎日感染者が新たな場所で確認され、数字が増えていきます。マスクを巡った暴力沙汰や除菌スプレーの盗難が発生したり、トイレットペーパーが不足するというデマが流れ、買い占めが発生しました。日本だけのことかと思っていたら、先日イギリスの友人からは、乾麺や缶詰の棚が空になったスーパーの写真が送られてきました。海外で言えば、アジア系の人が暴言や暴力を受ける事件も発生しています。
これらはどれもパニックに近い反応と映りますが、こうした言動の裏には人々の不安や恐怖の感情があるのではないでしょうか。

EQのコンピテンシーの一つ「感情リテラシー」は、自分自身が抱いている感情、そしてその感情がどこから来るのかを理解する力です。今私たちが抱いている不安や恐怖は、コロナウィルスがどこまで広がるのか、どこに潜んでいていつ自分たちの身の回りに影響を及ぼすのかなど、見通しが立たないことへの不安、目に見えないものへの恐怖が大きいのかもしれません。

人の脳は不安や恐怖に脅かされると理性的な判断力が弱まり、感情的に反応してしまう傾向があります。太古から備わる生存本能が色濃く表出し、生きていくことを脅かす警鐘が反射的に鳴り響くのかもしれません。冒頭のパニックに近い現象は、そうした反応の表れともとれます。

だからこそ今私たちに求められるのは、「感情リテラシー」を発揮して自分が恐怖や不安に襲われていることを受け止め、その上で一度冷静に物事を考えなおす態度ではないかと思います。この過程では「結果を見すえた思考」や「楽観性の発揮」など他のEQコンピテンシーも役に立ちそうです。

例えばトイレットペーパーなどの商品が店頭に少ないとなれば”不安”になり、”一応”買っておきたくなります。でも冷静にそれが本当に事実なのかを見極め、自分が今”一応”買っておくことがどのような結果をもたらすのか、考えを巡らせてみることもできるかもしれません(「結果を見すえた思考」)。

コロナウィルスは健康な人が感染すると、無症状だったり軽くて済む場合も多いと言われています。ですから、手洗いや人ごみに行かないなどの可能な対策はしつつ、あまり深刻にとらえすぎない姿勢も時には必要かもしれません(「楽観性の発揮」)。

恐怖や不安に駆られた行動をとる前に一度立ち止まり、一人一人が冷静に反応を選んでいくこと、つまり単なる「反応」ではなく考えて「対応」していくことは、新型コロナウィルスの影響を最小限に抑えるカギかもしれません。