コロナ禍がEQに及ぼした影響と、今必要性の高まるEQコンピテンシーとは
コロナ禍は私たちのEQにどのような影響を及ぼしたと思われますか?
アメリカのシックスセカンズ本部の記事によると、全世界で2017年から上昇を続けていたEQスコアはコロナ禍のあった2020年に下降してしまったそうです(右図)。
弊社が活用しているシックスセカンズ社のEQモデルには8つのEQコンピテンシーがありますが、この中でも特に下落が大きかったのが、どのような状況でも展望が見出せる力、つまり「楽観性の発揮」で、5%下落しています。若い層での下落が大きく影響したようで、45歳以降は+1%なのに対し、35歳以下で‐11%でした。また(8つのコンピテンシーには含まれませんが)楽観性と関連した能力である「協力する力」「想像力」「リスクをとる力」なども世界的に10%以上も下落したそうです。
楽観性が低くなると生じる課題
記事によると、神経生物学的にこれは当然の結果であり、強いストレス下では目の前の脅威に集中するために創造性や思いやり、ビジョンを描く力などは意図的にシャットダウンされてしまうものなのだそうです。
しかし一方で、こうした生物学的な反応は、本来、目の前のトラのような実在する短期間の脅威に対する反応なのであって、コロナ禍のような脅威において同様の反応をすることには二つの問題があることも指摘しています。一つは、このような長期間のストレス下においては極度の疲労につながりかねないこと。もう一つは、楽観性が非常に重要な能力であるという点。より良い判断を下したり、質の高い関係を築いたり、より効果的に働いたり、心身の健康を保つことと楽観性は相関性がとても高いことがわかっているのです。
唯一上昇したEQコンピテンシーは
8つのうち7つのコンピテンシーが下落する中、一つだけ上昇しているものがありました。「結果を見すえた思考」、つまり物事のメリット、デメリットを考えてから行動できる力です。外食しても大丈夫だろうか?このイベントは開催してよいだろうか?買い物に行って大丈夫だろうか?・・・等、当たり前に行っていたことを、皆さんもこれまで以上に慎重に吟味するようになったのではないでしょうか。
「結果を見すえた思考」は「楽観性の発揮」とはよく対比的に見るコンピテンシーなので、これが上昇したのは不思議ではありません。EQアセスメントで「結果を見すえた思考」が「楽観性の発揮」より高めに出た場合、その方はあれこれ考えてなかなか行動に移せないという傾向があるのではないか、と分析します。今世界全体が慎重になり、なかなか前に進めない、という状況はある意味イメージ通りではないでしょうか?
意識的に楽観性を発揮していく
EQでは自分の気持ちや考えを「知る」ことをした上で、行動を「選び」、自分を「活かし」ていきます。
まだまだ出口は完全には見えていないコロナ禍ではありますが、ワクチンが徐々に行きわたってきたり、これまでとは段階も変わりつつあるのかもしれません。記事ではそろそろ希望や楽観性を「選ぶ」ときにきつつあるのではないかと提言しています。
コロナ禍で登場した言葉に”ニューノーマル”というものがあります。これは当初、もう過去と同じようなことはできないから受け入れるしかない、といった否定的な意味合いを含んでいました。でも最近ここにもっとポジティブな意味合いが生まれ始めているのではないかと述べられています。このような危機は人生に一度あるかないか。だからこの機会を今までの習慣的なパターンを見直す良い機会にしよう、もっと意図的に選択をしていこう、という考え方になりつつあるのではないか、というわけです。
世界には気候変動、人種差別、貧富の格差など、これまでのやり方から生まれてきた様々な問題が残っています。こうした問題を解消していくには、行動を起こしていく事、そして全く新しいアプローチや方法が必要となります。そこで、コロナ禍という危機を乗り越えるために抑えられていた楽観性、創造性、協力といった能力が、これまで以上に欠かせなくなるだろう―――として記事は締めくくられています。
ワクチン接種も早く進んだアメリカの記事なので、もしかしたら半歩先を行っている内容なのかもしれません。また、人によってもコロナ禍で受けた影響は大きく異なり、決してすべての人にとって楽観的になれるタイミングというわけではないでしょう。
でも、一度立ち止まり、新たな視点で自分自身の立ち位置や心の持ち方を確認をしてみても良い時なのかもしれません。