人生の「キーワード」

皆さんは人生の拠り所となるような、ご自身のキーワードがありますでしょうか。その言葉を心の中で唱えるだけで、エネルギーが湧いてきたり行動を起こすきっかけになったりするような言葉。
魔法のような話かもしれませんが、自分にとってのそんなキーワードがあると、随分と生きやすいかも知れません。

当然ですが、そのキーワードは自分の奥底深くにある価値観や、EQの概念にもある「ノーブルゴール(人生の目標)」と密接に 結びついていることが大事になってきそうです。
私自身はEQの能力開発に関わる過程で数年の模索を経て、「支える」というキーワードが浮かび上がってきました。働くを支える、生活を支える、そうした生きることのすべてに支えるという形で関わっていきたい、そんな思いに至りました。

そういった自分にとって行動の拠り所となるキーワードにまつわる出来事が先日ありました。

次のアポまでの時間調整が必要になり、新宿のとあるカフェに入りました。かなり混んでいましたが、やっと着席できホッと一息ついていると、隣の30代くらいの女性が一片のメモを私に差し出しました。人前では言えないことなので、、と小声で囁きながら。私は訝しく思いながらもメモに目を落としました。

「お金を貸してください」
そこにはそう書かれていました。

どうしたんですか?と尋ねる私に、その女性は堰を切ったように話し始めました。曰く、会社を辞めさせられた、ひどいブラック企業だ、社会はおかしい、等々。

そんな話を聞きながら、一体自分に何ができるだろうか、この人を自分なりに支えるってどういうことだろう、と私は考えていました。
熟慮した上で、私はその女性の目を見据えてこう言いました。

「お金を差し上げることはできません。でも、あなたの今後について、どうしていきたいのかお聴きしながら一緒に解決策を探っていくことはできると思います」

その言葉を聞くと、その女性は、
「あ、そうですか。じゃあいいです。失礼します」
と言いながら、そそくさと立ち去っていきました。

果たして何が正解だったのか、分かりません。ただ、目の前に困っていそうな人が現れ、その人を支えるための何かを自分なりに模索した上で実際の行動に移したことに、自分としては納得しています。迷ったときに自分のキーワードが頭に浮かび、その価値基準に基づいて行動を選択していく、日々そんな実践をしていきたいと思える出来事でした。

コンビンスアイ代表 齋藤 良