「恐れ」ることを恐れない

今年ももう残すところ数週間となりました。今年は本当に変化の激しい一年でした。

この一年、変化に対応していくため、心身ともに疲弊された、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしかしたらそのような方の中には、気持ちを保つためにご自身の感情を見ないようにしてきた、感情を振り返っている余裕などなかった、という方もいらっしゃるかもしれません。

一年の終わり、そんな方もご自身の心を少し振返ってみませんか。
皆さんの心の中には今、どんな感情があるでしょうか?

感情は蓋をすると意図せぬ場所で噴出してしまったり、ストレスとなって心身に負担を大きくかけてしまう可能性があります。ですから忙しかったり疲れていそうなときこそ、一度立ち止まって、自分の感情を言葉にすることはとても大切です。

今回は、どのような感情も受け止めていくため、普段私たちが「弱さ」として蓋をしがちかもしれない感情、そしてこの変化の時代には多くの人が抱くであろう感情、「恐れ」について、米国シックスセカンズのCEO、ジョシュア・フリードマン氏の記事から要点を見ていきたいと思います。


大昔、二人の男がこん棒片手に食料を求め、ジャングルを歩いているところを想像してください。片方の男が「皆が行かない方へ行ってみようぜ。そっちの方が獲物がたくさんいるはずだろ」と言いました。するともう片方の男は答えます。「馬鹿言うな、そんな危ないことできるかよ。そっちは巨大な恐竜がいたらしいぞ。」

こうしたやりとりは、私たちの頭の中でも行われます。どちらの側が言うことも間違ってはいないのでしょうが、脳は生存のために後者の「気をつけろ」という声を重視するようになっています。これが「恐れ」です。

ーー記事はこんな話から始まり、詳細に恐れについて考察されています。長い文章なのでポイントを箇条書きにしてご紹介したいと思います。

恐れとは;

  • 恐れは「自分にとって大切なものが危険にさらされている」という警告。一見悪者に感じられるかもしれないが、危険から身を守るための健全な感情であり、私たちがリスク面も考慮できるよう、助けてくれている。私たちに「それで大丈夫?」と確認してくれているようなもの。(したがって確信があるとき、考えが明確な時、恐れは消える)

恐れへの対応について;

  • 恐れは原因を見ずにいると漠然とした不安となるが、原因がわかれば自分が何を脅威と感じていて、何を守ろうとしているのかがわかり、考えがクリアになる
  • 特にストレスの大きい状況において、人は物事に反応する際、他者の反応を参考にしているということを覚えておくべき。恐れは伝染するだからこそリーダーは自身の恐れを認め、それと向き合ったうえで、目的意識、慎重さをもって行動することが大事
  • 恐れは大事なメッセージであり、助言としてしっかり耳を傾けるが、それに支配されてはいけない。恐れに基づいてリスク面から状況を把握したら、今度は別の視点からも見てみることが大事。
  • 私たちは「恐がるか、勇気を出すか」のような二元論に陥りやすい。しかし恐がるときにのみ勇気を出せるもの。様々な対立する感情が心の中に併存している。だから「他にどんな感情がある?」と自問するのは大切なステップ。
  • 恐れながらも前進するときこそ、最も学び、成長できるとき

つまり、恐れというのは「リスク面もみよう」という注意喚起システムであり、私たちが物事の全体像を見ることを助けてくれているわけです。
恐れを見ないようにしていると、それは漠然とした不安となり、適切な判断ができなくなってしまいます。ですから、恐れの存在をしっかり認め、何が原因で、何を守りたいと思っているのか、冷静に確認すること、その上で今度は別の視点も入れて、より広い視野で状況をとらえることが大事、というわけです。


全ての感情はメッセージです。私たちはつい「嫌な」あるいは「ネガティブな」感情、などと言ってしまうことがありますが、こうして見ていくとそうした感情にもきちんと意味やメッセージがあり、それを受け止めることは目の前の状況に対応していく上で欠かせないことがわかります。

さて冒頭の質問に戻って、

皆さんの心の中には今、どんな感情がありますか?

年末にかけて、一度振返ってみられるのはいかがでしょうか。