不安な時こそ意識的に感謝を
先日、都内の企業様向けにオンライン研修をさせていただきましたが、その中で受講者の方から質問がありました。
「相手を認めることの大切さは理解できますが、それが今日のテーマでもある“感謝”とどう結びつくのですか?」
その質問に対して次のように答えました。
「その相手の行為を当たり前と思って素通りしている限り、本当に感謝する気持ちは芽生えてこないのではないでしょうか。相手の存在や行為を否定せず、まずはしっかりと受け止めて認めることで、初めて感謝の念が沸いてくるのではないかと思います」
と言いつつ、“では果たして自分は、相手を認め感謝の気持ちを持って日々過ごせているのだろうか?”という疑問が沸いてきました。
そんな時、たまたまテレビである経営者のドキュメンタリー系番組が放送されているのが目に留まりました。テレビ的な脚色・編集があるのかどうかは分かりませんが、単純に見る限り、その経営者の周囲への感謝度合いが半端ではなく、生き方として徹頭徹尾身についているようでした。
「いつも皆が頑張ってくれているお陰」「見返りを求めて給料を渡していない」など、社員一人一人の存在を心から認めている姿がそこには映し出されていました。
翻って、自分自身はどうでしょう。。
コロナショックという激しいうねりの中で、“もっと生産性高い仕事して固定費減らせないか”、“在宅ワークって、パフォーマンス落ちないのか”...そういった思いが折に触れては頭に浮かび、社員の人たちを必ずしも認められていなかったのでは?という気もします。
そうすると、周りの人たちが頑張っていることが自分の目には入りづらくなり、知らず知らずのうちに感謝する機会も気持ちも失ってしまうように思います。
結果、感情はネガティブな方に向かい始め、置かれた状況に対する不安や焦りといった感情に支配されやすくなってしまいます。
では、この不安や焦りの感情を取り除くにはどうすれば良いでしょうか。
ある意味それは単純な話で、逆説的に、周りに感謝していけば良いということになります。
そのためには、前提としてやはり相手を心から認めることが大切、ということになるのでしょう。
一般的に、人は意識や思いが自分自身に向くときに不安感情が起きやすいようです。端的にいえば、自分のことを考えているときです。先ほどの例で言うと、私はきっと「この危機下でビジネスをなんとか回していかなければ」という“自分のこと”にばかり意識が向いていたのかもしれません。
他方、他者に意識や思いが向くと不安感情は起きづらいと言われています。他人のことを考えているときです。(その場合、必ずしもポジティブな感情になるとは限らず、怒りや嫌悪といったネガティブ感情に向かうこともありますが。)
他者に対する感謝の思いを抱き伝えていくことで、自分に対する不安は自ずと払拭されていくといえそうです。
外に目を向け、周囲の存在や周りで起きてることを決して当たり前と思わず、“ありがたいこと”と心から感謝の念を抱けるとき、不安な思いは軽減され、困難な時代を前向きに生き抜く勇気が湧いてくるのではないでしょうか。
今もし不安に駆られている自分がいるとしたら、周りの人の存在や行為に敢えて意識を向け、「ありがとう」を伝えてみてはいかがでしょう。